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■11連載コラム 阿寒平太の世界雑記
「阿寒 平太の世界雑記」
by 阿寒 平太
□作者略歴
つげの会13期生。鹿島建設東京支店勤務後、同社海外事業本部エジプト支店に11年間勤務し、帰国したのち退職。他の建設会社に2年間勤務後独立。現在、建設現場管理工学のコンサルタントとして、国内及び海外の建設工事関連のコンサルタント業務を行っている。「NPOつげの会」設立メンバー。
世界を飛び回りながら、当ホームページのために原稿を発信。その幅広い活動範囲から、いくつかのコラムを投稿中のため、一部他メディアとの重複原稿となる場合あり。世界の建築・文化から、芸能や工芸、遊興、江戸までその興味は広く、このコーナーも満を持しての登場。乞うご期待。
※この項は、新しい投稿を上に掲載しています。※
阿寒 平太コラム34~ 植物不思議世界編の1からはこちら ※このページです
阿寒 平太コラム34~46 世界雑記の29から41まではこちら>>
阿寒 平太コラム16~33 世界雑記の11から28まではこちら>>
阿寒 平太コラム~15 世界雑記の10まではこちら>>
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□50 植物不思議世界編4
EPA・DHA 
なぜ色々な企業がDHAやEPAの売り込みに熱心なのでしょうか?
『脳の機能を向上させる効果があるDHA、血液をサラサラにする効果があるとされているEPA、そしてイワシやサバなどの青魚に大量に含まれている。』こんな謳い文句でテレビのショップチャンネルでは、あれやこれやとDHAとEPAの売り込みが盛んです。確かにこれは、嘘ではないのですが、真実のみを全て語っているわけでもないのです。
DHAは「ドコサヘキサエン酸」の略、EPAは「エイコサペンタエン酸」の略で、生物生理学の学生は、『どこさ、えいこらさ』と語呂合わせで覚えています。
EPAもDHAも、より小さな脂肪酸のALA(アルファリノレン酸)という物が変換されてできる脂肪酸です。ですので、青魚を食べることでEPAやDHAを直接摂取することはできますが、ALAを含む植物性の食材を十分に摂取することで、体内で合成することもできるので、必ず摂らないといけない脂肪酸ではありません。
ALAはほとんどの生物の細胞内にあるミトコンドリア内で生成されるため、動植物性の食品全般に含まれています。つまり、不足したALAは食品から取り入れることも可能です。
青魚やマグロやサバなど回遊しながら餌をとっている魚は、DHAやEPAが豊富ですが、これらの魚は体内でこれを生成しているのではないのです。これらの魚が餌として食べる微細藻類(びさいそうるい)、いわゆる植物プランクトンに含まれているのです。皆さんもクロレラ やユーグレナという言葉をよく聞くと思います。これ以外にたくさんの種類がありますが、これらが植物プランクトンと言われているもので、淡水にも海水や泥のなかにもいます。
微細藻類は光合成が可能で、地球の大気に含まれる酸素の約半分を生成しており、微細藻類は、上位の生物の栄養段階に栄養を供給しているのです。そしてこの植物プランクトンたちは、培養するとものすごい勢いで増殖するのです。ですのでサプリメントの錠剤は、他の薬剤に比べると簡単に安く作れるのです。1個の微細藻類を培養すると3日後には1兆個になると言われています。
これで皆様もビジネスのだいたいの構図が分かりになったのではないかと思います。『DHAやEPAは、健康に大切ですよ、だけどヒトは自分では作れませんよ、青魚にはたくさん含まれていますが、食べるのは大変ですよ。サプリで簡単に取れますよ。』というビジネスの構図なのです。

科学雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」の最近の記事に、『DHAほかオメガ3脂肪酸サプリ、健康な人では心臓に害も』という記事が載っていました。この記事は簡単に述べると以下の内容です。
『オメガ3のサプリメントは特定の心疾患を持つ人に有益である一方、大多数の人に対する心臓病への効果はほとんど証明されていないという。また、オメガ3サプリメントの摂取がかえって心臓の健康を害する可能性を示す有力な研究もあり、オメガ3脂肪酸のサプリメントに有益な効果は認められていない。』
この記事は、『結論として、オメガ3は健康と長寿にとって重要な栄養素ですが、食事から取るのがいちばんです』と結んであった。
SEKAI雑記 植物不思議世界編04 おわり
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□49 植物不思議世界編3
ミトコンドリア・イヴ(mitochondrial Eve) 
皆さんは、ミトコンドリア・イヴと言う女性をご存知ですか?
聖書に語られているエデンの園でアダムの妻として3760 BC (ユダヤ暦)に生まれ、2820 BC (ユダヤ暦)に940歳で亡くなったEveの事ではありません。
下の絵は、ロシアの画家ヴィクトル・カルロヴィッチ・シュテンベルが描いたエデンの園のEveですが、ミトコンドリア・イヴを描いた絵は残念ながらありません。

細胞の中に、ミトコンドリアと言う細胞内小器官が1細胞あたり100個から2000個程度含まれています。このミトコンドリアは、糖や脂質、そして呼吸から得た酸素を使って、エネルギーの源である ATP という物質を作るという重要な働きをしています。
細胞には、細胞核と言う中心体があり、ヒトの遺伝情報であるDNAはこの核の中にありますが、ただ不思議なことに、ミトコンドリアは独自のDNA(遺伝情報)を自分の中に持っており、エネルギーを作るのに必要な遺伝子が含まれるため、世代を超えて引き継がれていきます。
しかし、このDNAは母親からのみ子に引き継がれます。受精後に父性ミトコンドリアが受精卵に入ってくると、瞬時に検知されオートファジー(自食作用)によって分解・除去されてしまいます。
つまりミトコンドリアDNAは必ず母親から子に受け継がれ、父親から受け継がれることはないのです。したがってミトコンドリアDNAを調べれば、母親、母親の母親、さらに母の母の母の…と女系をたどることができるのです。
そして行き着いた先が、約16±4万年前にアフリカに生存していたと推定されるミトコンドリア・イブ(mitochondrial Eve)という女性です。ミトコンドリア・イブとは、ヒトについての分子生物学において、現生人類の最も近い共通女系祖先(matrilineal
most recent common ancestor)に対し名付けられた愛称なのです。
下の図は、Internetで拾ったミトコンドリア・イブの図ですが、はるか昔にこんな素敵な女性がいたという事を想像するだけでも楽しくなります。

SEKAI雑記 植物不思議世界編03 おわり
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□48 植物不思議世界編2
細胞の大きさ
細胞という言葉を聞くと、何やら小さいものと言う感じを抱きます。今回は、そんな細胞の大きさについてのお話をします。
ヒトの体は、37兆個の細胞で出来ていると言われ、1個の細胞は1㎜の1/100(10㎛)ほどの大きさです。ヒトの受精卵は、これより10倍ほど大きく直径0.1㎜(100㎛)程で、ヒトの体の中では一番大きい細胞です。精子は、頭から尾の先端まで60㎛ほどの長さですが、精子の頭の部分は3㎛x5㎛程の楕円形で、細胞の中で一番小さいと言われています。
この卵子は一つのヒトの細胞ですが、小さすぎて顕微鏡の世界です。しかし、鶏の卵も一つの細胞です。ダチョウの卵は30㎝もありますが、これも一つの細胞です。
しかし、長さという点だけで比べると、ヒトの細胞でもこれに負けないくらいの長さの細胞があります。腰から足先までつながっている坐骨神経細胞は、1m以上の長さがあります。
ヒトは200種類以上の細胞があると言われています。卵子と精子の2つの細胞が出合いから、ヒトの全ての細胞に変わりえるBS細胞になり、それが血液や筋肉や神経などの元になるそれぞれの幹細胞になり、それぞれの種類の細胞に分かれ、最終的に37兆個になる過程の速さを考えると、想像を絶する生産をしているものだなと感じます。

SEKAI雑記 植物不思議世界編02 おわり
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□47 植物不思議世界編1
動き回ることを選択した動物、定着することを選択した植物
大学から60年間、面々と続けてきた建設工学分野の仕事を卒業し、植物生理学を次の分野と定め、S大学理学部生物化学科に入学し、学び始めました。そこで見知った面白そうな話題に狙いを定め、「阿寒平太の世界雑記」(植物不思議世界編)として皆様にご提供していきます。
動物や植物は、原始の世界で一つの生命単位から進化し、動き回ることを選択した動物、片や定着することを選択した植物と言う違いだけです。細胞単位でみると動物も植物もほとんど同じで、植物細胞の場合、細胞内に葉緑体があり、細胞膜の外側に、細胞壁という厚めの外壁があるのが大きな違いです。
動物は、体外から色々な食物を取り入れ、余分なモノや老廃物をうんことおしっこで廃棄します。植物も同じように体外から栄養を取り入れています。それではその余分なもの、老廃物はどうしているのでしょうか。樹木は「立ちション」の対象になっても樹木の「立ちション」は見たことはありません。
植物も、炭酸ガスを取り入れ酸素を吐き出しその際、不要な水を生み出します。植物は根から余分な水分やそれ以外の老廃物を排出しています、謂わば樹木は密かに「立ちション」をしているのです。
ただ、それだけでは十分ではないので、植物は、余分なモノや老廃物を、セルロース繊維を主な成分とする細胞壁に蓄えていきます。
この細胞壁は、細胞分裂と細胞の老化に伴い、樹木の表面に移動し、木化、コルク化で樹木の硬い表面を覆い且つ、樹木が高く立つ構造部位になります。
植物は、定着を選んだだけあって、動物より複雑な生理機能を持っていると言えます。今後このような植物の不思議世界をご紹介していきます。
SEKAI雑記 植物不思議世界編01 おわり
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