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■論文・コラム5

 
 地域ブランドでまちおこし
 株式会社マキュアス 代表取締役 猪瀬典夫


序.はじめに
 地名と商品名やサービス名を組み合わせた商標登録を積極的に認める地域団体商標登録(地域ブランド)制度が平成18年4月1日に施行され、「地域ブランド」に対する関心が高まっている。
地域ブランド形成の動きを各地で活発化させることは、地域産業の再生・再構築を促し、新たな市場形成に寄与するものと考えられる。
 そこで、地域の産業競争力の強化と地域経済の活性化につなげて行くための取り組み方策として、地域ブランドの活用方法などについて紹介する。

1.地域団体商標登録について
 地域ブランドとしては、「地域名」と「商品(役務)名」を組み合わせた商標が用いられることが多いが、前述の地域団体商標登録が制度化される以前には、このような商標を文字商標として登録しようとしても、原則として、そのままの形で登録を受けることができなかった。

■従前の登録可能な商標の条件
○ 全国的な知名度を獲得したことにより、特定の事業者の商品であることを識別できる場合
○ 図形等を組み合わせた場合
  しかし、従来の商標登録制度については、下記のような問題点が指摘されていた。

■従前の商標登録についての問題点
○ 全国的な知名度を獲得するまでの間に、他人による信用への便乗を排除できない。
○ 図形等を組み合わせた場合、同一の文字を使用していた場合でも、図形などが異なる場合や文字だけの使用は排除できない。
  このような背景に基づき、地域団体商標登録が制度化され、その登録要件は、下記の通りである。

■地域団体商標の登録要件
① 出願人が備えるべき主体要件
   法人格+事業協同組合等の特別の法律により設立された組合+設立根拠法において構成員資格者の加入の自由が保証
② 構成員に使用をさせる商標であること
③ 商標の週知性の要件
   商標が使用の実績により、出願人である団体又はその構成員の業務に係る商品もしくは役務を示すものとして周知となっている場合に登録を認める。
   複数都道府県に及ぶほどの週知性を獲得している。
④ 商標が地域の名称及び商品又は役務の名称等からなること
   地域の名称+商品(役務)の普通名称
例:○○りんご、○○みかん
地域の名称+商品(役務)の慣用名称
例:○○焼、○○織
地域の名称+商品(役務)の普通名称又は慣用名称+産地等を表示する際に付される文字として慣用されている文字
例:本場○○織
⑤ 地域と商品(役務)との密接関連性
   商標中の「地域の名称」が、商品や産地であるなどの商品(役務)と密接な関連性を有する地域の名称であることが必要。

2.地域ブランドづくりや特産品開発へのアプローチ
 埼玉県内の商工会へのアンケート調査の結果、地域ブランドづくりや特産品開発への取り組みにおける商品化・商品開発のアプローチとしては下記のように分類された。
○ 特産農産物の活用
○ 地域の食文化の活用
○ 地域資源の活用
○ 伝統産業・産業技術の活用
○ キャラクターの活用

3.商工会における地域ブランドによるまちおこしへの取り組み方策について
 多くの商工会においては、過年度の「むらおこし事業」などに基づき、地域の特産品の開発などに取り組んできた。
 それらの取り組みにおいては、商品開発のアイデアなどの調査研究、商品開発、販路拡大などの段階的取り組みを推進してきた。
 しかし、商工会へのヒアリングにおいては、市民・消費者などのマーケットにおいて認知度が低い、参画事業所における販売実績が上がらない、安定的な販売がなされていないなどの指摘があった。
 商工会事業としての特産品開発などにおいては、経済的補助や商工会事務局による企画などへの支援がある期間については、事業遂行が図られているが、事業としてのビジネスプランが十分に確立するまでには至っていないことが多い。
 そのため、今後の特産品開発や地域ブランドづくりへの取り組みにおいては、下記に示す取り組みの留意点に基づき、参画事業への助言・指導とともに、商工会としての支援内容・方策について、持続的・継続的な取り組み誘発へ向けての効果的な事業化推進が求められる。

(1)事業所の主体的参画の誘発
 特産品開発や地域ブランドづくりにおいては、参画事業所が自らのビジネスとしての主体的な取り組みが不可欠である。
 事業所の主体的な事業参画を誘発するためには、第二創業への取り組みアプローチや経営革新手法の活用などによるビジネスプランとして、特産品開発・商品化へ取り組む必要がある。
 また、地域ブランドづくりにおいては、共同によるマーケットへの情報発信力の拡充に基づく事業収益性の確保・向上、商品力の向上へ向けての事業所間の相互啓発の誘発のための推進体制・事業化組織の確立への取り組みと支援が求められる。



【取り組み事例】
○ 小川町商工会における“のらぼう菜”を活用した商品開発にあたっては、各種団体との連携と相互啓発により、各種事業所の主体的な参画が誘発され、さまざまな商品開発が実現している。

■“のらぼう菜”を活用したさまざまな商品化が実現(一部)

○ 久喜市商工会における持続的一店逸品へ向けての「久喜のれん会」の取り組み事業:一店逸品運動への取り組みを一過性の事業に終わらせることなく、参画事業所の商品力及び経営力の強化と、自立的事業展開を実施し得る事業所の育成を図るために、推進組織としての“のれん会”設立と重点的な事業展開を図っている。

■一店逸品“久喜のれん会”の取り組み事業の概要
1.ミステリーショッパーによる参加店実態調査
   一店逸品運動参加店に専門のミステリーショッパーを派遣し、細部にわたる調査を行い、参加店共通の問題点を抽出し、参加店の共通解決課題としてレベルアップを図る。
2.奥さんのためのお店の女学校の開校
   ミステリーショッパー調査から出た共通課題を受け、一店逸品運動参加店を対象とする「逸店・逸品・逸遇」づくりに対するスキルの修得を目指して、個人店における店舗管理と接客応対の実質的主体者としての「お店の奥さん」に焦点を当て、実技を重視した「奥さんのためのお店の女学校」を開校する。
3.一店逸品モデル店づくり
   一店逸品運動参加店の中から「成功モデル店候補店」を募り、補助金などの有効的かつ優先的な投入などの特別扱いによる「逸店・逸品・逸遇」のモデル店づくりを行う。
4.お店の顔づくり発表会の開催
   一店逸品運動参加店共通の「逸事」づくりの推進策として、お店の学校と連動した「お店の顔づくり発表会」を開催し、専門家のディスプレイクリエーターの審査を受ける。
5.「it’s優」推奨店制度の創設
   一店逸品運動の連続参加店の中から、「逸店・逸品・逸遇」のうち、逸遇を含む最低2つ以上の逸が揃った店を商工会が認定・推奨する。
6.地域物産展と連動した「逸品の会」の定期開催
地産地消を図るために、周辺地域内の大型店へ「地域特産品と逸品」による「地域物産展」の企画の提案を行い、催事の開催を行っていく。
7.地域教育の一環としての「逸品」授業の提案
地域教育の一環として、地元学の修得を目指した一店逸品参加店店主を講師とした小中学校への体験学習の提案を行う。

(2)販路拡大へ向けての場づくりへの支援
 特産品の開発や地域ブランドづくりにおける事業所の参画姿勢の低調さと、事業収益性の低さによる悪循環に起因していることが想定される。
 そのため、商工会の取り組みにおいては、参加事業所の店頭での販売促進指導の徹底とともに、広域から幅広い集客が期待される集客拠点での販売など、販路拡大に寄与する場・機会の提供に努める必要がある。

【取り組み事例】
○ 吉川市商工会では、なまずの里としてのまちづくりの推進にあたり、数多くの事業所がなまず関連商品の開発に取り組んでおり、それの市民への普及と、広域的情報発信も含めた販売促進を図るために、駅前に販売所“ラッピーーランド”を常設している。“ラッピーーランド”は、特産品販売会が会員事業所の会費負担などにより自主運営しており、委託販売方式による営業している。


○ 岡部商工会では、地域資源開発事業により商品化した特産品の販売拡充を図るために、多数の集客実績がある「道の駅おかべ」で展示・販売している。
 

○ 栗橋町商工会の事業所の大型店の特産品フェアへの出店
 商工会会員企業の食品製造メーカーが、久喜市のイトーヨーカ堂で開催された県東部地域広域商工会主催による特産品フェアに出展し、チーズケーキを販売し、好調な売上実績を上げた。
 その販売にあたっては、商品の魅力とともに、試食品を惜しまず提供するなど販売促進上の工夫をしたことが売上実績につながった。
 特産品開発などにあたっては、商品開発とともに、販売ルートや販売促進の手立ても含めた各事業所のビジネスモデルの構築が必要。
新商品のセールスプロモーション、モニタリングなどへの取り組みにおいては、大型店の集客力の活用による場・機会の提供が想定される。

(3)宣伝・広告などの販売促進支援
 特産品の開発や地域ブランドづくりに基づく商品供給の拡充を図るためには、販路拡大のための宣伝・広告などへの支援が求められる。
特に、個々の事業所での販売促進事業への取り組みの困難性への対応や、特産品や地域ブランドを通じての地域の売り込みを図るためには、商工会による広告・宣伝などへの支援が求められる。

【取り組み事例】
○ 鴻巣市商工会においては、特産品の開発以降においても、商品の周知、マーケットへのアピールを図るために、特産品カタログの継続的な作成・配布を行っている。

○ 小川町商工会における“のらぼう菜”取り扱い店に対しては、店頭掲示やのぼり旗などによりPR活動を支援している。また、店頭販売を積極的に推進することで、商品に対する消費者からの評価を直接確かめ、商品の改善などへの取り組みを周知している。

○ ときがわ町商工会では、県が推進している「パパ・ママ応援ショップ」の店頭掲示シートを独自に作成し、特産品開発と事業所における販売促進の連携手法として活用している。

(4)環境演出への取り組み
  特産品の開発や地域ブランドづくりへの取り組みおいては、商品の供給とともに、それらの特産品にちなんだ環境形成が求められる。
  特産品や地域ブランドにちなんだ環境演出を実施することにより、地域魅力の創出とともに、地域・消費者へのアピール、広域来訪者への視覚的イメージ形成へ寄与する。
それらの取り組みにおいては、商工会における事業実施とともに、公共空間などの整備・管理の多くを担う行政との連携により、道路などの公共施設なども含めた環境演出に取り組む必要がある。

【取り組み事例】
○ 加須市は、手打ちうどんとともに、手書き鯉のぼりの産地として有名である。商工会館の前面や加須駅前には、一年中鯉のぼりが泳いでおり、地場産業としてのアピールが図られている。

○ 川島町商工会では、「都会に一番近い農村」への取り組みや「すったて」の広報・PR推進を図るために、商工会の公用車のステッカーを貼ってアピールに努めている。

○ 吉川市商工会館の壁面にはなまずの絵が描かれているとともに、玄関にはなまずのオブジェが設置されている。また、マンホールの蓋や公園の遊具などにおいてもなまずをモチーフとしたデザインが施されており、市全体としてのなまずの里としてのアピールに努めている。

(5)消費者・生活者との協力関係づくり、地域の生活文化として定着
 特産品や地域ブランドについては、広域的な周知が求められるとともに、地域及び広域的に認知されて、初めて消費行動に基づく収益性の向上も図られる。
  そのため、特産品や地域ブランドの商品企画・開発段階から、地域の消費者・生活者の協力を得るための取り組みが求められる。
  また、特産品や地域ブランドとして定着するためには、地域の生活文化の一部として親しまれることが必要であり、商工会の取り組みとしては、地域内連携を重視した事業展開が求められる。

【取り組み事例】
○ 白岡町商工会における特産品開発事業における市民協力
 白岡町商工会では、特産品開発事業に継続的に取り組んでいる。そのような中で、販売促進への取り組みとして、イベント時などの販売・キャンペーン活動において、市民のボランティア的な活動として「PR大使」として参加・協力を得ている。

○ 小川町商工会における“のらぼう菜”を活用した商品開発にあたっては、町民などの幅広い参画による消費者モニタリングとしての試食会の開催などを行った。

■商品化にあたっての町民参加による試食会

○ 皆野町商工会の柿を活用したまちづくりへの取り組みにおいては、柿に親しんでもらうための取り組みとして、商工会女性部が参画して柿渋染わらじ教室・アートフラワー教室やつるし柿体験などのさまざまな体験教室を開講している。
○ また、皆野町商工会では、どこの家にも柿がある皆野町の風景を守るために、町民ボランティアたちが柿の木の手入れや柿酢づくりに取り組む「柿のわ事業」や、柿酢などの名物品の普及改良や情報収集に基づくサービスの改善に役立てるために、「柿のみなの応援団」の発足など地域に根づいた事業展開のための取り組みを図っている。
 
(6)まちづくりとしての事業展開
 特産品の開発や地域ブランドづくりは、単に商品開発に終わらせるのではなく、地域魅力の向上に寄与するものである。
 特産品や地域ブランドという商品が、地域の個性を表現し、集客につながり、経済効果を誘発するとともに、集客施設で特産品や地域ブランドをPR・アピールすることで、それらの販売促進効果が期待される。
 そのため、各種まちづくり事業などとの連携や施設間連携の中での特産品や地域ブランドの供給などへの取り組みが求められる。

【取り組み事例】
○ 幸手市商工会では、中心市街地活性化などのまちづくり事業の中で、幸手市推奨品の開発事業に取り組んでおり、桜関連グッズや幸手桜のまちしあわせ弁当、幸手幸せ物語キャラクター商品「神様犬ぷー」携帯ストラップなどを開発・商品化している。それらの商品は、“しあわせcafé Ami”や“ドックパーク幸手”などのまちづくりプロジェクトで整備された施設で販売されており、まちづくり事業の中で相互連携の取り組みが図られている。

○ 桶川市商工会では、桶川市観光協会と連携し、“中山道宿場館”において、推奨特産品のPR・紹介を行っており、広域観光へ対応した情報発信と中山道の宿場町の特色を活かしたまちづくり事業との連携を図っている。

(7)地域ブランド化への事業展開の方向
 地域ブランドは、広域的に周知されていることが求められる。
 また、広域に周知されるためには、地域性と個性を有することにより差別化された商品などの供給への取り組みが求められる。
 既存の特産品開発などを通じての商品などの商品力の強化への継続的な取り組みが求められ、その取り組みにより、地域ブランドへと成熟させていくことが求められる。
 さらに、地域ブランド化へ向けては、個々の企業努力などによる特産品開発から、同業団体や地域企業の連携による組織的な取り組みによる販路拡大や地域産業としての育成等に基づく地域の産業文化として発展させていくことが求められる。
 一方、地域ブランドづくりへの取り組みのについては、地域団体商標登録へ向けての課題として、事業推進・申請主体としての組織要件の不備や、複数都道府県に及ぶ認知度の欠如などが指摘される。
 今後の特産品開発や地域ブランドにあたっては、地域団体商標登録を念頭におきながらも、地域づくりや地域経済の活性化への貢献などを目指して、具体的な進捗に合わせた各種取り組みの継続的な事業化推進を図ることが求められる。


出典(抜粋):埼玉県商工会連合会/「地域ブランドでまちおこし-特産品などを活用した地域活性化-」/平成20年3月
※埼玉県商工会連合会が、県内商工会へのアンケート調査やヒアリング調査の実施などに基づき、平成19年度広域振興等地域活性化事業報告書として取りまとめた。

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